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「君は、強いよ」 彼が、悲痛な声で言う。私は何も言わずにそれを聞いた。 「だから、大丈夫だろう。でも、彼女は」 声を詰まらせる彼の頬に一筋の涙が伝い、私はただそれを見ていた。 やがて彼は私の家を去り、あとには私1人が残る。 やけに冷静な脳みそは、私に涙も流させない。 アフター 彼から貰ったものは、指輪がひとつ、キーホルダーが4つ、それからブルーのペアグラスに、リボンのついた財布、くまのぬいぐるみとハートのネックレス、それとピンクのワンピース。 私は、そのひとつひとつを眺めながら呟く。 「捨てよう」 思い立ったら吉日だ。手近にあった大きめの紙袋に、次々と詰め込んでいく。 ワンピースは、今年のホワイトデーに貰った。以前、デート中に通りかかった店のショーウィンドウを見て、「可愛い」と呟いたのを覚えていたらしい。「絶対似合うから着てみてよ」そう彼が笑むから、私はそれに身を包み、少女のようにくるりくるりと回っては、その裾をはためかせた。 それからはお気に入りとなったそのワンピースを、私はたたみもせず、無造作に紙袋の底に突っ込んだ。 くまのぬいぐるみは、去年の誕生日。可愛かったけれど、「私、そんな子供じゃないわ」とふてくされたのを覚えている。「ねえ、ちゃんと見てよ」と彼が言って、くまの首にかかったハートのネックレスを見つけた。 驚きと感動で思わず涙をこぼしたそのぬいぐるみとネックレスを、ワンピースの上に乱暴に押し込んだ。 リボンのついた財布は、クリスマス。2人で選びに行って、その場で買ってもらった。「ありがとう」と言うと、「もっとクリスマスに酔ったお礼でもいいんじゃない」といたずらっぽく、彼は私にキスをした。 お金やカード類を全部抜き終えたその財布を、くまの頭の上に置く。 ブルーのペアグラスは、何も特別でない日。2人で行った雑貨屋で、2人ともが気に入って衝動買いしてしまったもの。「ずっと、このグラスを使おうね」と約束しあって、グラスは私の家の食器棚に並んだ。 以来ずっと2人で何かを飲む時には必ず使ったそのグラスを、無理矢理すき間にはめこんだ。 4つのキーホルダーは、いつもらったのかも忘れてしまった。彼が突然、「これあげるよ」とくれたものもあったし、デートの途中に私がひとめぼれしたものもあった。 半ばちぎるように携帯から外したその4つのキーホルダーを、まとめて袋に放り投げる。 「それから――」 私は、自分の左手の薬指にはまっている指輪を見た。そして、それに手をかける。夜店で買ったちゃちなもので、ガラスのダイヤが煌いていた。 だが、いくら力を入れても、動かない。まるで、指輪自体に意思があって、離れたくないとでも言うように。 そのうち指のほうが痛くなってきて、私は洗面台に走り、石鹸をこすりつけた。これで少しは滑りがよくなるはずだ。 指輪をくれたとき、彼は言った。「いつか、もっとちゃんとしたの買うからさ、それまでつけといてよ」 やっと、それが抜けた頃には、指は真っ赤になっていて、私はその指で指輪を掴み、紙袋に叩きつけた。 彼から貰ったものは、指輪がひとつ、キーホルダーが4つ、それからブルーのペアグラスに、リボンのついた財布、くまのぬいぐるみとハートのネックレス、それとピンクのワンピース。そして、 「ゴミの日、いつだったかな」 たくさんの、思い出。 07.06.30 ... World --333-- 彼女は、彼女なりに。 >> Novel |